銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

「なんでだよ?なんで数日でそんなに変わっちまったんだよ!?」

間口は皿の胸倉を掴む。

其れでも皿は冷静だった。

「俺は人間になるンだよ間口。
“五言絶句” 一言・白樺。」

詠唱と共に現れた白い花々は、白銀界をすり抜けて、間口の両手足を縛り付ける。

「くっ……
高上鬼神の弾・ガリ……」

間口は魔法弾を出そうと右手の人差し指に力を込める。

「ははっ!させないよう!」

ウィオが指をパチンと鳴らすと、間口の右腕が動かなくなる。

「……皿、戻ってこいよ!!お前の居場所は其処なのか?」

間口の問いに皿は笑った。

「ああ。」

「……」

全ての力が消えた。

間口の中にある感情は強い哀しみに押し潰され消えかかる。

指に矯めていた魔法弾が消失する。

「間口!!間口っ!!」

美紗は間口に必死に呼びかけながら、白樺をサバイバルナイフで斬る。

(もう、皿は帰ってこない……

こんなに俺は皿に憎まれていたのか?

死んだ……死んだ方がマシだ……)

白樺は間口の喉元に巻きつくと、ゆっくりと死へと引き伸ばしていく。






「ふぅ、間口 吾平。あんたは何で此処にいる?」

誰かの声がする。

其れは聞いた事の無い声。

「大切な物を守る為。いや、“護る”の方がかっこいいかな?」

天空から聞こえるこの声は、希望の欠片。

「天武之一道
砲覇蝉吏(ほうはぜんり)」

術名を唱えると、声は皿目掛けて飛び交う。

「!!」

強い蹴りが皿の左腕に当たった。

するとみるみるうちに腕は青く染まっていく。

「七瀬 香……っ、ボクの邪魔をするな!!」

海の様に深く、空の様に明るい、青髪の美女は、赤い瞳を瞬きさせる。

白すぎる肌に対称的な黒いローブ。

金属製のグローブを両手にはめ込み、踵が鋭いブラウンブーツを履いている。
< 75 / 197 >

この作品をシェア

pagetop