銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「なんでだよ?なんで数日でそんなに変わっちまったんだよ!?」
間口は皿の胸倉を掴む。
其れでも皿は冷静だった。
「俺は人間になるンだよ間口。
“五言絶句” 一言・白樺。」
詠唱と共に現れた白い花々は、白銀界をすり抜けて、間口の両手足を縛り付ける。
「くっ……
高上鬼神の弾・ガリ……」
間口は魔法弾を出そうと右手の人差し指に力を込める。
「ははっ!させないよう!」
ウィオが指をパチンと鳴らすと、間口の右腕が動かなくなる。
「……皿、戻ってこいよ!!お前の居場所は其処なのか?」
間口の問いに皿は笑った。
「ああ。」
「……」
全ての力が消えた。
間口の中にある感情は強い哀しみに押し潰され消えかかる。
指に矯めていた魔法弾が消失する。
「間口!!間口っ!!」
美紗は間口に必死に呼びかけながら、白樺をサバイバルナイフで斬る。
(もう、皿は帰ってこない……
こんなに俺は皿に憎まれていたのか?
死んだ……死んだ方がマシだ……)
白樺は間口の喉元に巻きつくと、ゆっくりと死へと引き伸ばしていく。
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「ふぅ、間口 吾平。あんたは何で此処にいる?」
誰かの声がする。
其れは聞いた事の無い声。
「大切な物を守る為。いや、“護る”の方がかっこいいかな?」
天空から聞こえるこの声は、希望の欠片。
「天武之一道
砲覇蝉吏(ほうはぜんり)」
術名を唱えると、声は皿目掛けて飛び交う。
「!!」
強い蹴りが皿の左腕に当たった。
するとみるみるうちに腕は青く染まっていく。
「七瀬 香……っ、ボクの邪魔をするな!!」
海の様に深く、空の様に明るい、青髪の美女は、赤い瞳を瞬きさせる。
白すぎる肌に対称的な黒いローブ。
金属製のグローブを両手にはめ込み、踵が鋭いブラウンブーツを履いている。