銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「……はははははハ!!ボクが負ける訳が無い!!

ましてやこんな、こんな一ランク下のお前なんかに!」

ウィオは気が狂ったかのように笑う。

美紗は此のおかしい少年を、ただ影から見つめる。

当の七瀬は、凍りついた炎を宿した瞳で、ウィオを見やった。

「さようなら七瀬!!」


ザン


「……そんな……」

七瀬の持っていたナイフで自らの首を斬ると、ウィオは倒れた。

肌が凍りついていくのが解る。

死んでゆく、ウィオは土へと還って行く。

目を大きく見開いた間々、少年は死んだ。

此の少年の居る辺りだけが、まるで時が止まったみたいだった。


バタッ


初めて見た人の死の瞬間に、思わず倒れた君主を、七瀬は静かに受け止めた。






「皿、お前……なんでそこまで人になりたい?」

美紗達と少し離れた処で、お互いの隙を探しあう間口と皿。

「こんな傀儡の姿……醜いだろう?」

傀儡……一体なんのことだ?

「俺はウィオ様に作られた傀儡だった。」

「なんだと?」

皿は右手を間口に翳す。

右手には星印の刻印が彫り込まれている。

「此れはウィオ様が作った傀儡の証なんだよ。」

昔の間口だったら……昔、いや数日前の間口だったら信じなかった。

そんな夢物語。

だけど自分が半妖だったのだから、皿が傀儡というのも信じられる。

実際あんな機械仕掛けの腕を見せられたんだから。

「でも俺を殺したら人間になれるってのは?」

「お前の躰を乗っ取るんだよ!!」

「!!」

隙を見られた。

間口の背後に回り、皿は五言絶句を唱えようとする。

「三言 芭蕉」

どんな花が来るか……

間口の考えとは逆に、現れたのは緑色の髪の女。

其のまま芭蕉の花を思わせる、深緑色の……美しく邪悪な魔女。
< 78 / 197 >

この作品をシェア

pagetop