銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「え、いやあたしはその…」

美紗は反論しようとした。

いきなり転校生が隣なんて気まずいのなんの……

「宜しくー。」

綺麗な顔で笑う鎖葉斗。

美紗の反論は虚しく散った。

「よ、宜しく……」


放課後。

美紗は一人で家への帰り道を歩いていた。

頭に浮かぶのは間口のことだった。

今日転校してきた白露君のことを、間口は気にいっていなかった。

間口は昔から荒っぽい性分で、気にいらない奴は虐めた事もあった。

「間口…… また、やりかねない。」

考えに頭を没頭させていると、突然、肩を掴まれた。

振り返ると見慣れた顔。

「俺がどうしたんだよ?」

自分より頭二つ分上に有る間口の顔。

困惑してるのか、呆れてるのか、やや引きつっている口元。

「な、なんでもないもん。」

さり気無く、間口の手を払いのけ、美紗は足早に立ち去ろうとする。

「おい、白江っ」

間口が追い掛けて来る。

何時の間にか美紗は逃げる。

「何で逃げるんだよ!」

「逃げてないっ。」

間口とはもう関わらない。

間口は嫌な奴……

……違う。

解ってる。

ただ、間口と話すと自分が傷つく気がして、何も向き合おうとしてない。

「おい、白江!!」

「嫌だ! 来ないでよ!!」

必死に彼を押しのけ、走る。
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