銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
あ……く……

誰だ?

……い……ん

煩い

あいらくん……

煩いんだよ

吾平君

俺は目覚めたくないんだ!!


サーッ


「間口……何で起きないの……?」

美紗は死んだかのように眠る間口を、雨に当たらないように木の下まで運ぶ。

あの後、美紗、七瀬と合流した四人。

然し皿の元へ向かった間口が帰ってこない。

間口が向かっていった森の奥へと見に行ってみるやいなや、
彼は腹部に深い傷を負って倒れていた。

「心が拒否している。敗北のショックのあまりに……」

鎖葉斗は間口を見て何をやっているんだ、とばかりに、思いっきり見下した。

「だって……親友の星の君がいきなり襲ってきたんだから……
誰だって戸惑うよあれは! しょうがないよ!」

星野 皿……彼は何故あえて親友の間口を、自らの新たな肉体に選んだんだ?

其れだけ……只それだけが引っかかる。

「吾平君の経験不足が原因ですよ。

誰だって解りますよ普通、傀儡に宿る魔の力が、星野君からは溢れ出ていた。

はっきり言って、気づいていなかった霧草さんと、間口君にボクは愕きました。」

意地悪そうに痛い所をついて来る、小悪魔・鎖葉斗。

忍は悪態をつかれたので、何か言いたげだったが、反論はできなかった。

「さーて……そろそろあたくしは去りますね。」

「もう行っちゃうのかい?」

キャルナスが彼女の肩に右手を置くやいなや、七瀬は一気に金属グローブで彼の手の平を潰す。

「あいたたたあ!!……いじゃないか、香?」

流石に№5 飾雨だけな事はある。

№10の七瀬の攻撃等、諸共としない。

「ふふ、触るなよ蛆の集ってる気持ち悪い手で。

あんたみたいな悪魔に触れると、あたくしの天力が見る見る萎んじゃうの。」

すごい鬱陶しそうな目でキャルナスを心底睨みつけると、
七瀬は森の入り口の方に向かって歩き出した。

「酷いなぁ、私は悪魔みたいな低級な生き物じゃないですよー。」

不満そうに、ここぞと心外、心外と、小姑の様にしつこく、キャルナスは立ち去る彼女に言い続けた。
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