銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「……まあねぇ。

だって哀れじゃない。

何も知らない、醜い支配者の世界とは無関係なのにさ、
あんな最低な男の為に死ぬなんて。」

まこはジーッと、穴が開くほど程オレの顔を見ると、
笑い転げた。

「なんだよおめぇは!?」

「むははは、いやね、裡音も大人になったなと思い。

ちゃんと真実を見ているからさ。」

まこが俺の横にある長椅子に座る。

「でもまだキャルナスや七瀬みたいに、
決心はつかないよね?

なんたって死刑になるかもしれないし。」

クスクス笑いながら、ポケットから出したスナック菓子をもぐもぐ食べるまこ。

「ああ。まだ決心はつかないねぇ……。

そう言うまこはどうなんだい?」

「まこもまだ今一かなぁ。

白江 美紗を助けてあげてもいいんだけどさぁ、

まこ、白露 鎖葉斗大っ嫌いだからさ。」

最後にとても哀しそうな顔をすると、
まこは部屋から出て行った。

「……万里、答えてくれ。

お前を殺した白露の側に付くべきなのか俺達は?

それともあの最低な……けれどお前が最後まで愛した男を守ればいいのか?」

今はもうこの世界中探し回っても存在するわけがない、
No.2 赤月 万里に説いた。

誰も答えるわけがなく、沈黙する室内に、外の夕立の激しい降り荒れる音が鳴り響いた。


ガチャ


まこが戻ってきたのか?

と、思ったら……

「独楽っさん!勉強中?」

瀬木夏 マリ(せきげ まり)。

№12 恋蘭だ。

太陽みたいな燃える赤い髪に、黒いメッシュを入れて長く伸ばしている。

服は身軽な白い半袖Tシャツに、茶色いジーンズ。

腰には二丁の赤と青の拳銃を。

……瀬木夏は、とてもよく万里に似ている。

だから見ると苦しくなる。

最後まで万里を守ってあげられなかった自分の小ささに、
また気づかされるから。
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