銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「……ああ、元気だよ。白露 鎖葉斗。」

白露 鎖葉斗。

万里を殺した……悪魔より性質が悪い、
いや、悪魔の何倍も性質が悪い男。

二度と交えたくなかった。

なのに、よりにもよって本日最後に会う支配下がこいつだなんてな。

本当に今日は最悪の日だ。

「用件は? 俺はあんまりあんたが好きじゃないからさ、
速めに電話を切りたいわけよ。」

俺がそう言ってるにも関わらず、白露はくすくす笑ってる。

本当に自分主義者な奴だ。

万里を殺して支配下に加わった時からそうだった。

どうせすぐにでも爾来を裏切ると思ったが実際そうだった。

裏切って、白江 美紗といういいカモを見つけて、
そいつを使って爾来や神灯を殺して、自分が頂点に立つつもりなんだこいつは。

“解ってるよ、どうせ僕が白江様をいいカモにしてるとでも思ってるんでしょ?

でも言っておくけど違うからね。

僕はなんの利益も考えずに白江様に仕えているんだ。”

こいつが利益も考えないで人に仕えるだと?

そんな莫迦な……

「じゃあなんであんたは其処にいるんだい?」

俺の問いに一際の間があく。

やっぱり答えられないんだろう、そう思ったら意外な答えが返ってきた。

今まで俺は問い続けてきた。

人に問い続けるのが俺の生きる意味。

問うことによって、世界を見透かしてしまおうと思ってた。

なのに……これほどまでに理解に苦しむ……あっさりとした答えは初めてだった。

“楽しいからだよ。”

楽しい……だと?

「何がだ?万里を殺したように……人を殺すのが楽しいのか!?」

少し声を荒げてしまった。

何時だって……片時も自分を表に出さないようにと心がけてきた。

取り乱すのはもう万里を失ったときに十分、してしまったから。

だからせめてこれからは冷静に物事を見届けようと思ってた。

だけど……何故だろう……

何故か此の男には勝てないんだ。

“赤月 万里……か。彼女を失って君は辛かっただろうね。

七瀬 香から聞いてるよ。

あれ以来君が別人の様になってしまった事。”

何を言っている……?

お前が万里を殺したのに?

初めてここまでの殺意を抱いた。

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