銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
記憶の世界?

意味がさっぱりわからない。

「お主の記憶の中から、最も感情移入されている場所。

其れが此の世臨街の時計台。」

……確かに当たりだ。

自分の余命を知らされた場所、鎖葉斗たちと鏡界を目指すと決意した場所、
此処は最も、美紗のスタート地点といっても過言じゃない。

「此処は……違う……」

美紗の違和感、思いっきりここはあの時計台なのに、何かが違うんだ。

「ああ、お主の記憶を忠実に創った世界じゃからな。」

得意げに曼陀羅は言う。

そうか、さっきの魔法陣できっと此の世界を創ったんだ……

「なにが目的なの?鎖葉斗君たちは?」

一間開けて、美紗の問いに曼陀羅は高々と答えた。

「試練じゃ。お主等の廃れた甘ったるい根性を、叩きなおしてやる。」

試練? 逆にこんがらがってきた。

けど試練というからにはやっぱり魔法とかについて特訓するのか?

「白江殿、お主には今から課題を述べる。

世臨街中から、自分を探し出すのじゃ。」

はい!? 自分を探す!?

自分は自分、ここに居るんじゃないのか?

「さぁ、今からスタートじゃ。

ちなみに此処での一時間は人間界での一日じゃ。

最低でも……三時間が限界じゃな。」

三時間、短い制限時間。

まぁ制限時間が短いのにはもう慣れた。

「三時間ね、わかった。」

「物分りがよいのぉ。皆も今頃自分たちの記憶の世界で頑張っておるだろう。」

皆も試練を受けているのか。

そうなったらますます負けられない。

「あ、間口は……?」

「彼奴は意識だけ記憶の世界に送り込んだ。」

意識だけ、かといって間口は今精神こそボロボロの状態なんだ……

美紗は間口のことが心配だったが、間口をあえて信頼し、
自らの試練に進むことを選んだ。

「ではスタート。」

始まった個々の試練。
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