血を吸うことを知らない吸血鬼
「香代、ねぇ香代」
鼻声で宥めるようにぽんぽんと背中を叩く。泣きやむのを待ち顔を覗き込んだ。
「僕と彼女を一緒のお墓にいれてくれないかな」
そう言うと真っ赤に腫らした目を擦りそれでも、しっかりとした表情で分かったと頷く。
「お父さんらしい事出来なかったからなぁ…して欲しいことある?」
少しだけ考え込むと可愛いらしい笑顔で恥ずかしそうにそっと呟いた。
「添い寝…してほしいかな」
心が温かくなるのが手に取るように分かる。香代の前髪を除けると可愛らしい笑顔がもっと良く見えた。
「おやすみ、香代」
最近良く眠ってなかったのだろうか。そう言うと安心したのか身体から力を抜き、重たそうに瞬きする。本当はちょっとだけ吸血鬼の力を使ったのだけれども。
「愛しい愛しい我が子よ、安心してお眠り」
ふっと意識が飛んだ香代に膝枕をしてやり、消えつつある身体から意識を外し、香代の頭を撫でると柔らかな笑みが零れた。
咲代。僕はきっと君と同じ所にはいけないだろうけどずっと君だけを愛してるよ。
香代が起きた頃には服だけが遺ってる事を考えると、眉が寄る。
枯れる事を知らない涙が一筋すっと流れた。
END
→あとがき