ダーク&ノイズ
終業のチャイムが鳴ると、川田はひとりの女生徒から事情を聞いていた。

町田亮子への電話を取り次いだ母親が聞いたのは、この女生徒の名前だった。

「誰かが電話をかけて誘い出したと見られるんだけど、なんで家の電話だったのか、理由は分かるかな?」

「亮子は、学校辞めてから携帯変えたんです。あいつらからしつこく電話がかかってくるんです」

(なるほど、そういうことか)

いじめを受けていた事実確認を終えると、川田はほかの情報を聞き出そうとした。

「それで、他に目立っていじめられていた生徒とか、知らないかな?」

「つい最近では木下裕子って、あいつらと同じクラスの生徒です」

その名前は、昨日の聞き込みでも挙がっていた。

「髪の毛全部焼かれて、すごい血まみれで帰るのを見たって、学校でも噂になってました」

(ひどいな、そりゃ)

想像するだけで川田は顔をしかめた。

「ありがとう」

そう言って立ち去ろうとする川田を、その女生徒は引き止めた。

「あの、亮子は、家出するような娘じゃないんです」

「だろうね」


そうとしか答えることは出来なかった。


このあと例の四人からも話を聞かなければならない。待たせてある校長室へ足を踏み入れると、思わず嘆息を交えて声をあげた。

「ひとり足りないじゃないですか」

悠美たちが控えるその部屋の中に、ひとり姿が見えない。


冬野真知子だ。
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