ダーク&ノイズ
「いえ、残れと言ってはいたんですが……」

「もしかして、警察という言葉を口にしました?」

しどろもどろに担任の教師は

「え、ええ……」

と答えた。

「そこは出さずにと言っておいたでしょう!」

教師は、自分が言っても聞かないので、念のため警察の名前を出したと言い訳した。

(冬野か!)

川田は直感で、冬野が昨夜の事件に絡んでいると想到した。

進藤から聞かされた話は、自分たちすれた大人には通じない戯言だが、この年代の人間には意外と信憑性をともなって伝わる。

(手が足りない!)

いったん部屋を出た川田はすぐさま進藤へ連絡し、木下裕子の保護を命令した。

「それから、冬野真知子を探す。パトカーを何台か待機させとけ」

電話を切った川田が再び校長室へ顔を見せると、厳しい表情で悠美たちに告げた。


「詳しく聞きたいことがある。署へ同行してもらおうか」

「逮捕状とかあんの?」

のぞみは不服そうに口を尖らせたが、

「冬野のことを聞くだけだが、お望みなら全部調べて傷害や恐喝で逮捕状出してやろうか?」

驚く校長らをよそに、川田は眼光を三人に据えた。

「行くよ」

それでもふてぶてしさは隠さずに、三人は川田のあとにしたがった。

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