ダーク&ノイズ
恐怖におののいているかと予想していた裕子の顔が、見下したような表情にかわって歯を見せた。

(こいつだ!)

頭に血を上らせた真知子をあざ笑うかのように、裕子は身をひるがえすと、再びその先の塀を乗り越えた。

裕子は警察に助けは求めず、そのまま真知子からの逃走をはかっている。

(絶対殺してやる)

真知子は血走った目で裕子を見据えて、次々と庭先を横切りながら追いかけた。



男たちの追跡に向かった警官隊に対して、進藤はまっすぐに真知子を目指した。すぐに捕まるのはこちらだと考えていたのだが、

(木下裕子は、なんで俺たちに助けを求めない?)

それが、二人の女子高生は想像よりもはるかに速く次々と塀を乗り越えた。

ようやく道に出た裕子は、そのまま入り組んだ住宅街を逃げてゆく。


情けないことに、あとを追う進藤が道に飛び出したときには、二人の姿を見失ってしまっていた。

(まずい)

呪いの副産物というべきものが、最悪な形であらわれると予想はできても、実際に行われると、これほどそら恐ろしいものだとは思わなかった。

警察に追われながらも諦めない執念。それは今まで追跡したどの犯人にもあてはまらないものだ。

それは、真知子らがすでに呪いに侵蝕されつつあるということか?

(とにかく今は、木下裕子を救わないと)

進藤は応援をこちらに集中させるよう要請すると、また熱いアスファルトを蹴って駆け出した。



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