ダーク&ノイズ
すがるような気持ちでリダイヤルすると、思いがけなく呼び出し音が鳴った。

「生きてる!」

とっさにそう思った悠美は、はじけるような笑顔でそう言った。

思わずまぶたを熱くした悠美は、今か今かと真知子の声を待ち、そして、連続した電子音はようやく途切れた。


「もしもし、真知子?」


すぐに返事はかえってこない。沈黙が続いた。


「真知子、ねえ、返事して!」


今まで見せていた笑顔が、みるみる曇ってゆく。

悠美の声が絶叫に近くなった。


全員が固唾をのんで、その通話に注目するなか、受話口からぽつりと言葉が漏れた。

その瞬間、悠美の顔から血の気が失せた。




『つぎは、お前だ』





進藤は、パトカーに次々と押し込まれる逮捕者を横目に見ながら、川田の説教を聞き続けていた。

「ええ、このまま捜索は続けますけど、はい……はい」

顔をしかめながら小言を聞いていたが、そのうち、川田が意外なことを口にした。

『最後に叫び声を聞いた正確な時間は分かるか?』

「はい?」

『最後に冬野真知子と思われる女の子の声を聞いた時刻だよ』

(なんでそんなものが今……)

いますぐにでも進藤なりの捜査を進めたいところだ。もどかしそうに時計を見て、いまの時間から逆算した。

「17時……5分くらいですかね?」

それを告げると、川田は納得したような返事をして電話を切った。

「なんだよ、いったい」

文句のひとつも言いたいが、今回ばかりは何も言えない。携帯をポケットにしまうと、署へ急行すべくパトカーのサイレンのスイッチを入れた。

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