ダーク&ノイズ
そう言われても進藤は引き下がらない。

「殺人より恐ろしいことが起こってるかも知れないんです」

「殺人より?」

意図をはかりかねるといったように、課長はメガネを直して聞き返した。

「その……」

説明するのが難しい。


言葉を探す進藤をあざ笑うかのように、取り調べをしていた男が口を挟んだ。

「バイバーイ。あ、そうそう。俺らね、未成年なの。知ってる?」

言った瞬間、その男の体が宙に浮いたかとおもうほど持ち上げられた。

胸ぐらをつかんだまま、進藤は燃えるような目を男に向ける。

「調子に乗るなよ、クソがき。その頭がハゲるまで表に出られると思うんじゃねえぞ」


捨てセリフを吐き捨てると、そのまま悠美たちのいる取調室へと足を向けた。

(まったく、最近のガキは)

再犯を繰り返す悪質な犯罪者でも、これほどのふてぶてしさは滅多にみせない。

少年法という壁は、むしろ犯罪の増加につながっているのではと、このごろ思うことが多い進藤だった。




「とにかく、君らを警察で保護しようと思うが、どうだろう?」

川田はその提案を悠美たちに申し出た。

しかし、三人は顔を見合わせたが、それでどうなるのでもないと考えたようだ。

悠美が川田に尋ねた。

「警察は、なにしてくれるんですか?」

「何って、ここに居れば安全だ。その間に事件を解決する」

当然といわんばかりに、川田は答えた。

「事件を解決って……」

「君らから聞いた話から容疑者を割り出して、逮捕するってことだよ」

少しは期待しただけに、三人の落胆も激しかった。
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