ダーク＆ノイズ
思い出すだけでも消え入りたい気持ちと怒りが顔を熱くし、悠美はそれを振り払うようにふたりに言った。

「死にたいの？　死にたくないの？」

のぞみと沙理奈も、自分を呪った人間が分かっていればまた違った反応をしめすのだろう。

しかし、いまのふたりにはその確信がない。

「あたしは嫌よ」

沙理奈ははっきりと拒絶してみせた。

「あたしも嫌」

のぞみも強くはねつけた。


（こんなときだけ……）


今までさんざん他人を傷つけ、虐げてきたくせに、こんなときだけ目をきらきらさせて正論を吐くのか──

と、悠美はその姿にむしずを走らせた。


「そう、じゃあいいよ。あたしは生きる。沙理奈たちは死ぬ。それだけのことだから」

そう言い捨てた悠美の携帯が、そのとき鳴った。


（また琢己──）


昨夜から電話とメールの着信がひっきりなしだ。

だが、悠美はそれらをことごとく拒否していた。

今度もそのまま電話を切ろうとして携帯を開いたが、その発信者の名前がその指を止めた。

琢己からではない。


（真知子！）


切断ボタンから通話ボタンへ指がスライドして、また止まった。

先ほどの電話を思い出したのだ。


繋がっている先はどこなのだろう。それを想像すると、悠美に恐怖がこみ上げてきた。

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