ダーク＆ノイズ
「あたし、知らなかったし。希里たちがそんなことしてるとか」

「マジか？」

「マジだよ。だからちゃんと言ったよ、もうこんなことやめようって。皆もやめるって言ってくれたし」

「マジで」

「信じてくれないの？」

「いや、そんなことないけどさ」

彼女である悠美の言葉を信じないわけにはいかないが、琢己は直感で嘘だと感じていた。恐らくなにかあったのだと。

それは同じ学校という閉塞された空間で生きている人間だけが感じ得る本能のようなものだ。

「木下がね、謝ってきたの。あたしに」

殊勝に俯いて反省してる風な自分の彼女に対して、初めて琢己は嫌悪を感じた。

「琢己が優しいから甘えちゃったって。もう大丈夫だから連絡しないって……伝えてくれって」

琢己は何も答えず、頭上に茂った藤の葉から漏れてくる日差しに目を細めていた。



あれから二日経ったが、木下はやはり今日も学校に出てこない。

おそらくこのまま辞めてしまうことは想像に難くないが、追い込んだ本人たちは、それが彼女の人生を大きく狂わせたとしても何の罪悪を感じることもないだろう。


今日も朝からいつもの様子と変わりはなかった。いや──若干の変化はあった。

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