ダーク&ノイズ
つぶれた神社を迂回すると、そこに問題の大木が立っていた。

(これか……)

畏怖をともなう神木とでもいうのだろうか、あらがいがたい畏れが胸中にわいた。


荒れていた息が次第に整ってゆく。

本能が、これ以上足が進むのを拒否している。


「川田さん!」


この場所にひとりでいることが急に心細くなって、進藤は思わず声をあげた。

だが、返事はない。

「川田さん、どこですか?」

もう一度呼んでみたが、やはり、それに応えるものはいなかった。


(帰りたい)


それが本音だが、警察官であるという責任感がそれを許さない。それに、川田からの返事がないということは、彼の身に何か起こった可能性がある。



じり……と、震える足が動いた。



見据えた先に、穴がある。



進藤はつばを飲み込んだ。

「川田さん……いるんですよね?」

一歩一歩、確かめるように草を踏みながら、その穴に近づいた。

石垣をかたち作っていた大きな石を踏み越える。

「川田さん、返事してください!」

目前に迫ったほら穴に向かって、進藤の声は荒くなった。


川田がいるとすれば、ここ意外考えられない。


思い出したようにジャケットの胸元に手を滑り込ませると、拳銃を取り出して撃鉄をあげた。

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