ダーク&ノイズ
もう一方の手で握った懐中電灯を穴に差し込む。


穴のなかが照らされた。


(いない……)


人ひとりが入れる小さな空間、そこに川田の姿はなかった。


だが、進藤の目に飛び込んできた光景が、一瞬川田の安否を忘れさせた。

おびただしい数の藁人形が、無残に釘で打ち付けられている。そのひとつひとつにどれほどの人の恨みがこめられているのか、想像すらつかない。

進藤はこみあげる嫌悪と恐怖で、思わず胃の内容物を吐露しそうになった。


(なんてこった)


古いものは良いとして、まさに作られたばかりの人形がずらりと並んでいる。そのなかに赤い毛糸で作られたものもあった。


その真新しい人形の一体から、ぶら下がったままの一本の釘抜きがある。



(川田さんが持ってた──)


それは川田がここに来て、その人形の釘を抜こうとしていたことを示している。


その釘を抜こうとしていたときに


(なにがあったんだ?)

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