ダーク&ノイズ
*****
今までこれほど走ったことはない。
悠美の肺は悲鳴をあげ、そして足は鉛をひきずっているかのように重くなっている。
だが、それでもこの足を止めることは許されない。
(捕まったら殺される!)
大げさではなく死が訪れるかもしれない。
げんに悠美は、つい先ほどまで本気で裕子を殺すことを考えていた。だからこそ、追ってくる二人の心理を読み違えることはない。
「待てよ、悠美!」
その声が遠ざかる気配はいっこうになかった。
追いかけるのぞみと沙理奈も必死だ。裏切られたという怒りが、同じく重い足を無理やり引っ張り上げている。
ビルの壁に反響していた三人の足音が、不意に返ってこなくなった。街を貫く幅の広い川を渡る橋に差し掛かっていた。
なかほどまで走ったとき、背後の声がひときわ大きくなった。
「待てって──」
のぞみの声だ。
振り返ろうとした悠美の肩は、力強く掴まれた。振り払おうとした腕に、今度は沙理奈の手が絡みつく。
(もうだめだ)
息が続かなかった。
だが、それは後ろのふたりも同じだ。のぞみと沙理奈の執念のほうが勝っていたというべきだろう。
悠美の肺は悲鳴をあげ、そして足は鉛をひきずっているかのように重くなっている。
だが、それでもこの足を止めることは許されない。
(捕まったら殺される!)
大げさではなく死が訪れるかもしれない。
げんに悠美は、つい先ほどまで本気で裕子を殺すことを考えていた。だからこそ、追ってくる二人の心理を読み違えることはない。
「待てよ、悠美!」
その声が遠ざかる気配はいっこうになかった。
追いかけるのぞみと沙理奈も必死だ。裏切られたという怒りが、同じく重い足を無理やり引っ張り上げている。
ビルの壁に反響していた三人の足音が、不意に返ってこなくなった。街を貫く幅の広い川を渡る橋に差し掛かっていた。
なかほどまで走ったとき、背後の声がひときわ大きくなった。
「待てって──」
のぞみの声だ。
振り返ろうとした悠美の肩は、力強く掴まれた。振り払おうとした腕に、今度は沙理奈の手が絡みつく。
(もうだめだ)
息が続かなかった。
だが、それは後ろのふたりも同じだ。のぞみと沙理奈の執念のほうが勝っていたというべきだろう。