ダーク&ノイズ
のぞみの体を抱きしめたのは沙理奈だった。しかし何かにすがろうとしたその手は、唐突にはねつけられた。

もはや周りの声は何も聞こえない。ただ、あの釘を打つ音が響いているだけだ。

視界は墨で塗りつぶされたような深い闇。

のぞみにとって触れるものすべてが恐怖で、すべてが魔の手に思えた。


コオーン……




死がすぐ隣にいる。


「いやああ!」




喉が張り裂けるほどの叫び声をあげたとき、不意にビルのネオンが目に映った。


のぞみは呆然とそれを眺め、そして隣に沙理奈がいるのを確認した。

(誰が今度は……)

確認するまでもない。押し倒したはずの悠美の姿がどこにもなかった。


「悠美が」

のぞみは息を呑んだ。

「なんで悠美が……」

そのとき、のぞみは初めて疑問を持った。

「呪いをかけてたのは悠美じゃなかったの?」

それなら悠美が死ぬはずはない。と、いうことだ。


落ち着きを取り戻した沙理奈が答えた。

「そうだけどさ、悠美も別のやつに呪いをかけられてたってことでしょ」

「誰に?」

「木下だよ。アイツ、呪いの木の下で悠美の金づち見つけたんでしょ。だったらアイツも呪いをかけにいったってことじゃん」

「そう……か」

のぞみは悠美が犯人じゃないと思いたかった。だが、そう説明されるとすべてが繋がる。残念だが、それを信じるしかなかった。そしてそれは間違ってはいない。


その暗い心を打ち払うように、沙理奈が明るい声をかけた。

「でもこれってさ、あたしたちの呪いが解けたってことじゃないの?」

「え?」
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