ダーク&ノイズ
カラオケボックスに入ったふたりは、手持ち無沙汰に曲名紹介の画面を眺めていた。

いつもこの空間には六人から四人の友人でにぎわっていたはずだ。それがふたりになってしまった寂しさが、先ほどまでの勢いを削いでいた。

「なんでこんなんなっちゃったんだろ」

パラパラと曲名の並んだ本をめくりながら、沙理奈がぽつりと言った。

「悠美が呪いをかけたからじゃん」

「そうだけどさ、なんでそんなこと」

「さあね。あたしら恨まれるようなことしてないし」

ふたりはこれまで誰を思いやることもなく生きてきた。そのため、他人のことも自分のことも、本当の意味での理解ができない。

ことの表面に見える事象だけでは、自分たちに降りかかった災難の原因を見極めることはできないだろう。



そのころ、カラオケ店のカウンター内のアルバイト店員は、客室のモニターカメラ画像をながめて舌打ちした。

「なにしてんだか」

モニターが真っ黒になっている。レンズになにかかぶせて室内を見られないようにしたのだろう。こんな客は少なくない。

(この客は確か──)

女子高生がふたり連れで入ったはずだ。

カップルではよくあることだが、女同士では珍しい。なかで何をしているのか、その店員は興味を持った。


ドアの外からも覗き見ることが出来ないわけではない。


卑猥な想像をはじめると我慢できなくなったのか、受け付けを放ったらかして、カウンターの外に足を向けた。

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