ダーク&ノイズ
やがてその渦巻いているものが細やかに見えてきた。


小さな手。


もがくようにうごめいている。


やがてそれにつづく腕が伸びてきた。


(呪われた……ひと)


溺れる人間があがくように、いくつかの顔が渦のなかで見え隠れした。


(地獄だ──)



そう思った瞬間、その渦の中から何人かが飛び出して、目の前に姿を現した。

そのひとりの顔を見たとき


(希里!)


そう思った。

苦悶に満ち、血の気は失ってその相貌は大きく変わっているが、恨みに満ちた目でのぞみを捕まえたのは、間違いなく希里だ。

希里だけではない。

(夏美、真知子!)

のぞみを捕らえたのはその三人だった。

友人らの目には憎悪の色しか見えない。腕が次々とのぞみの体に絡まった。

(なんで)

人間とは思えない力で、のぞみの体は引っ張られた。


「いやあああああ!」

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