ダーク&ノイズ
のぞみが目の前の炎を揺らして、冷たい笑いを浮かべた。


(ひどすぎる)


その血も涙もない行為に、背筋が凍る。


つぎの瞬間、目の前が真っ赤に染まった。

ぼうっと炎が立ち上がる音とともに、ぢりぢりと髪の毛が焼ける音が広がってゆく。

「ぎゃあああ!」

たまらず悠美は悲鳴をあげて頭を振った。

顔を濡らした油に火が伝わると、自分の肉が焼ける音を聞いた。



声にならない悲鳴をあげ続ける悠美から、捕らえていた手が離れた。自分たちに燃え移るのを恐れたものだ。

自由を得た悠美は、地面を転がってもがいた。

「熱い! 熱い!」

自分の頬の脂肪が溶けて炎に変わってゆく。やがて首から胸まで、耐え難い痛みが広がった。


とにかく悠美は逃れたかった。


視界がオレンジに染まって前が見えない。それでも顔を覆いながら悠美は走った。

いつの間にか草木が脚に絡みついてくる。


先ほどまで確かにあった校舎は、影もかたちも無くなっていた。代わって、鬱蒼と茂る木々が周りを取り囲んでいた。

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