ダーク&ノイズ
しかし、悠美には周囲の変化を気に留めるよゆうなどまったく無い。
おぼつかない足取りが、急に宙に浮いた。
続いて冷たい水が全身を覆い、口と鼻から大量の水が流れ込んでくる。
近くに池があったのだ。
そこに悠美は思いがけず飛び込んでいた。
(助かった)
緑色の水底を眺めながらそう思った。
激痛が冷やされて、むしろ心地よいほどだ。ひとときの安堵の後、光差す水面に体を浮かせた。
水のしたたる髪の毛を掻き揚げた手が、がさりという感触とともに大量の髪の毛を抜いた。
呆然とする悠美の目の前に、女たちが駆け寄ってきた。
(誰……なの?)
見慣れない恰好をしている。
時代劇に出てくる村の娘が、こんなみすぼらしい着物をいつも着ている。と、頭を巡らせた。
岸辺に陣取った十数人の娘らは、冷笑を浮かべて悠美をあざ笑った。
「あんた、すごい顔になってんじゃない」
「もう佐吉さんには顔向け出来ないわね」
「化け物みたい」
(佐吉って……誰よ)
娘らの嘲笑を浴びながら考えていたとき、いきなり足をすくわれて水中に没した。
水の中にも仲間がいたのかと、足を掴む者に目を向けた瞬間、悠美は目を見開いた。
火傷を負った、ただれた手が足首を掴んでいる。
その先には、目にしたことのない異形の顔があった。
髪の毛が焼けた皮膚に張り付いている。ただれた皮膚がまぶたをゆがませ、唇は半分くっついていた。
(お凛!)
とっさにその女を見て、悠美はそう思った。
おぼつかない足取りが、急に宙に浮いた。
続いて冷たい水が全身を覆い、口と鼻から大量の水が流れ込んでくる。
近くに池があったのだ。
そこに悠美は思いがけず飛び込んでいた。
(助かった)
緑色の水底を眺めながらそう思った。
激痛が冷やされて、むしろ心地よいほどだ。ひとときの安堵の後、光差す水面に体を浮かせた。
水のしたたる髪の毛を掻き揚げた手が、がさりという感触とともに大量の髪の毛を抜いた。
呆然とする悠美の目の前に、女たちが駆け寄ってきた。
(誰……なの?)
見慣れない恰好をしている。
時代劇に出てくる村の娘が、こんなみすぼらしい着物をいつも着ている。と、頭を巡らせた。
岸辺に陣取った十数人の娘らは、冷笑を浮かべて悠美をあざ笑った。
「あんた、すごい顔になってんじゃない」
「もう佐吉さんには顔向け出来ないわね」
「化け物みたい」
(佐吉って……誰よ)
娘らの嘲笑を浴びながら考えていたとき、いきなり足をすくわれて水中に没した。
水の中にも仲間がいたのかと、足を掴む者に目を向けた瞬間、悠美は目を見開いた。
火傷を負った、ただれた手が足首を掴んでいる。
その先には、目にしたことのない異形の顔があった。
髪の毛が焼けた皮膚に張り付いている。ただれた皮膚がまぶたをゆがませ、唇は半分くっついていた。
(お凛!)
とっさにその女を見て、悠美はそう思った。