ダーク&ノイズ
ドアの向こうが騒がしさを増した。かなりの人数が集まってきたようだ。

「せーの!」

その声とともに激しい力が加えられた。

「うおおお!」

琢己と恭一も力を振り絞って抵抗する。そのとき、背後の佐々木から声が飛んだ。

「嘯を吹く。耳をふさげ」

(しょう……って?)

疑問を問うまでもない。恭一が素早く耳をふさぐのを見て、琢己もあわててそれにならった。


口笛のような音が佐々木の口からもれ、それは長く病室内に響いた。



壁と床がビリリと震える。



ドアが乱暴に開けられると、どっと警備員と医師が室内になだれをうった。が、つぎの瞬間、それらの人々は短い奇声をあげて昏倒した。

廊下で見守っていた看護師らも、つぎつぎにその身を床上に並べてしまった。


(なんか知んねえけど……すげえ)


驚嘆の表情を佐々木に向けた琢己の目に、薄くまぶたを開く悠美の姿が見えた。

「悠美!」

琢己はベッドの脇に飛びつき、点滴をつながれている手をとった。

「琢……己?」

「うん……」

ほかにも言葉は用意していたつもりだったが、いまの琢己にはあいづちを打つことしか出来ない。

熱いものがまぶたの裏に湧いてくるのをこらえるので必死だった。



いっぽうの悠美は、長い夢を見ていたようだと感じていた。



長い、ものすごく長い夢だ。


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