ダーク&ノイズ
その日の昼休みは特におかしなことも無かった。

いつものようにグループに入って弁当を食べ、いつものように会話が弾む。

そこでようやく胸を撫で下ろした悠美だったが、放課後再び猜疑心にさいなまれる事となった。


「今日さ、琢己が用事あるんだって。一緒に帰るね」


ホームルームが終わってざわつく教室。

いつもは別行動で帰る悠美が希里らを捕まえてそう言うと、場の空気が一瞬で凍りついた。

誰もが言葉を失くしたように口をつぐみ、悠美を凝視して固まった。


「え、なんか……マズイの?」


一度は払拭したはずの不安が再び悠美の頭を支配してゆく。夏美が言いにくそうに口を開いた。

「えっと……今日はちょっとホラ、悠美はマズイって」

「なにそれ……」

ここで真知子が思い出したように饒舌になった。

「正樹がね、男友達紹介してくれるって」

「そうそう、悠美は琢己くんがいるからマズイじゃん」

「あたしら男居ないしね」

助け舟に掴まるように次々と合いの手を入れる希里らが、ひどく不自然に見えて仕方がない。

疑い出せばキリがないのは分かっている。

しかし、悠美はそうせずにはいられなかった。
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