ダーク&ノイズ
泣き叫ぶ生徒の両腕、肩までが、机のなかにもぐりこんでしまっている。


教師の全身の血が温度を失った。いや、その教室内の生徒すべてがそうだ。


廊下には、興味本位で他のクラスの生徒らが集まってきた。その生徒らもその光景に息をのんで足をすくませた。


「だれか助け──」


さらにその体が机にもぐりこんでゆく。

首がへし折れ、その生徒は言葉を失った。まるで空気の抜けていく人型の風船のように、どこかへ引きずり込まれてゆく。

あっという間に上半身が視界から消えていた。


誰しもが一歩も動けない。


いっぽうではうずくまり、奇声をあげ続ける生徒たち。

常識では理解できない恐怖が、


闇とともに訪れる。


「きゃああー!」


音とともに、訪れる。


最後までのこったルーズソックスが、ついに飲み込まれた。と同時に、恐怖に縛られていた生徒らが声を解き放った。

恐怖が伝染し、校内は恐慌をきたした。



その女性教師は、ひどくあわてた様子で職員室に駆け込んできた。

「平泉先生!」

これからの対応を考えてうなだれていた平泉は、その教師に呼ばれて、けだるそうに顔を向けた。

「何してるんですか、おたくのクラス、大変なことになってますよ!」

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