ダーク&ノイズ
その尋常でない様子に、飛び上がった平泉だったが、突然に胸の痛みを覚えてうずくまった。

(これ以上は、心臓がもたない)

小心な平泉にとっては、ここからが正念場となるだろう。


女性教師と教頭に、引きずられるようにして階段を登った平泉の耳に、いきなりガラスの割れる音が響いてきた。

「一体、なにを……」

続いて、争いあう怒声が聞こえてくる。


そこへ何人かの生徒が血相をかえて、飛び込むように駆けてきた。

「先生、カッターとかハサミもって喧嘩してます!」

(冗談じゃないぞ!)

平泉にとっては卒倒しそうなショックだ。

「平泉先生、早く止めなさい!」

「ええ、教頭先生も一緒に止めてくださいよ」

「君が担任だろう!」

いまどきの子供は何をするかわからない。

そんな凶器を振り回しているような現場に飛び込んでいけるのか、平泉の腰はひけたままだ。

「何してる、私は他の先生を呼んでくる。早く行きなさい!」

教頭は、および腰の平泉の背中を叩くと、そのまま強引に突き飛ばした。


よろめいたまま進んだ廊下の先に、ドアごと蹴倒された生徒が転がりでてきた。

その様相に平泉は目を疑った。

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