ダーク&ノイズ
同時刻、悠美のいる病室。

佐々木が施した符は絶大な威力を発揮はしたが、それでも完全に防ぐことはできなかった。

「この呪禁をやぶるほどとは……」

自らの法力をつかって呪祖を防いだ佐々木は、その呪力の大きさに眉をひそめた。

ベッドの上で荒い息をしている悠美は、しかし、この嫌味な霊能者にはじめて絶大な信頼をよせた。

「ありがとうございます」

「君のためだけではない。礼はいらない」

が、佐々木に寛容な優しさは、やはりない。

「とにかく体調を早くととのえてくれ。でないと封じることが難しい」

「あの……」

そこで琢己が遠慮がちに聞いた。

「どうして悠美も一緒に行かないといけないんですか?」

それは水沢神社へ、ということだ。

「以前あそこは、当時の高名な霊能者によって封じられたと聞いている。呪いを行っても、霊がそう簡単にこたえることはない。しかし、彼女はそれをたやすく成し遂げてしまった。それどころか、霊の暴走を引き起こしている」

佐々木は悠美を見据えていった。

「何らかの理由があるはずだ。それをつきとめなければ、霊を鎮めるのは難しい」

反呪ということであれば事は簡単に済む、とも言った。

しかしもはや、悠美ひとりを助ければよいという事態ではなくなっている。


(それにしても手が込んでいる)


佐々木はこの呪いに乗じて、反呪法を流布した人間の悪意を感じていた。

< 163 / 250 >

この作品をシェア

pagetop