ダーク&ノイズ
「川田さーん!」

横井が無警戒に叫ぶと、福田がそれを制した。

「誰かいるぞ」

福田の目線の先を追うと、そこには大木の下にあいたほら穴がある。

そこにさっと人影が見え隠れした。


(そんな、こんなもの子供の頃はなかった)


伝説のほら穴が出現していることに戦慄が走る。


ふたりは警棒を抜くと、同時にその穴へと駆け寄った。



「警察だ、出てきなさい!」

チラリと見えたのは長い髪だ。それは進藤でも、ましてや頭の薄くなった川田では決して無い。

覗き込んだふたりの目に、どうにかして隠れようとする少女の姿があった。

「ここでなにしている。出てきなさい」

高校生のようだが、悠美たちの通う学校の制服とは違う。

「何もしてないって」

その少女はわずかな抵抗を見せたが、観念したようにその身を外にもちだした。


手には何も持っていなかったが、横井がすぐに中を調べると、釘と金づちを引っ張り出してきた。

「福田さん、ちょっと……この中……」

横井の顔が青ざめている。福田にはその理由がわかっていた。


「呪ったからって、罪になるわけじゃないんでしょ」

開き直った少女は、そう吐き捨てた。

「どうしてそんなことをしたんだ」

少女にはなんの罪の意識もないように見える。福田はそれにそら恐ろしさを感じた。

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