ダーク&ノイズ
「ムカつくやつがいるからに決まってんじゃん。あんたも呪ってやろうか。名前なんての?」

「これで本当に人が死んだらどうするつもりだ」

真剣にさとそうとする福田を、その少女は軽くかわしてあざ笑う。

「超ウケるんだけど、おっさん。なにマジになってんの?」

「マジになるだろ。人の命のことだぞ」

「そういうのってさ、ウザイって言うの。あんたの名前教えてよ」

福田のこぶしが、無意識に握りしめられた。

「質問してるのはこっちだ。どうしてこんなことしたんだ!」

「こっちも聞いてんだろ。おっさんの名前教えろよ」

「ちょっとちょっと、どんな職質ですか」

横井はふたりの不可解なやり取りに割ってはいった。


「怖いんだろ」


少女は見透かしたように笑みをふくんだ。

「ふざけるな、とにかくここは立ち入り禁止だ。すぐに出て行け!」

少女の腕をつかんで、境内の外へ連れて行くと、放り出すようにして突き飛ばした。


「ビビってんじゃねえよ、警察のくせにさ」


最後に放った少女の言葉が、福田の胸に響いた。

(ビビってる?)

確かにそうかもしれない。


「あの昔話が本当ならな」


あえて否定するような独り言をつぶやくと、横井のもとへと戻っていった。

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