ダーク&ノイズ
校舎を振り返りながら、数人の女生徒が足早に校門から出てくるのを、テレビ番組のディレクターである星野がめざとく見つけた。

「ちょっと、君たち」

中継車から飛び出すと、あわててその女生徒に駆け寄った。


昨夜の殺人事件で街は沸いているところだが、ほとんどのテレビ局は容疑者の通う高校へと詰め掛けていた。

被害者であるこの学校へは、現在この星野たちしかいなかった。

朝、登校時の生徒へのインタビューを済ませた時点で、あとは葬儀の模様をとれば良いと考えたのだろう。

だが、星野はある情報をキャッチしていた。


『この学校の冬野ってのが首謀者みたいですよ。まだ逃走中だって』


ひとりの女生徒がインタビューに答えたものだ。

だが、未成年だけに非常にデリケートな扱いが必要になる。裏をとるまで放送は控えることにしていた。


(真相を突き止めてやる)


そのスクープを一番に報道できるかどうか。星野ははやる気持ちを抑えながらマイクを差し出した。

「例の連続殺人事件、この学校の生徒が首謀者だって声が出てるんだけど、それって──」

少女らは話を最後まで聞かなかった。

「それより、いま学校で何人も殺されてるんです!」

星野はとっさにその言葉が理解できなかった。

「いま逃げてきたんだから」
「刃物ふりまわして見境なく──」

(なにを言ってるんだ)

と、考えを整理するのはすぐに無意味となった。

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