ダーク&ノイズ
校舎を仰いだその目に、廊下を逃げ回る生徒らの姿が映る。と、突然星野は声を荒らげた。

「おい、カメラ!」

その生徒らの後ろを猛追するのは、暴漢でもなんでもない。どこにでも見られる女子高生だった。

が、

「早く回せー!」

手に手に凶器を持ち、髪を振り乱して追いかける姿は尋常なものとは思われない。

「何してんだ、早くしろ!」

星野の鬼気迫る形相に、あわててカメラマンがスイッチを入れ、目の前の少女にレンズを向けた。

「そっちじゃねえ、あれだ!」

レンズを掴んだ星野が、強引にカメラの向きをかえる。

「おい、レポートもだ!」

つぎの瞬間、カメラマンの血相が変わった。

「うわ……」

レポーターがマイクに音声を入れ、実況を始めたが、状況を把握できていないため、内容は支離滅裂といえる。

それでもカメラが惨劇の一部始終を収めてゆくあいだ、星野は興奮に身をふるわせていた。

(すごい、こりゃすごいぞ!)

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