ダーク&ノイズ
(俺を釣るつもりか?)

宇野は、マスコミ風情がこざかしい、とでも言いたげな表情を作った。

「いや、知らんようだな。もういい」

さっと向きをかえた宇野は、背中で星野の声を聞いた。

「冬野って生徒……ですかね」

宇野の足が止まるのを見た星野は、心のなかで

(ビンゴ!)

と、ほくそ笑んだ。


きびすを返して迫る宇野の顔は、さきほどまでの澄ましたものではなかった。

「いいか、そのことは絶対報道するな。絶対だ」

「それこそ警察の横暴ですよ。局に正式に申し入れをして、報道規制の了解をとってもらえませんかね」

そんなことが出来るなら、とっくにやっている。

「連続殺人の首謀者が女子高生。そりゃ記事になりますねえ」

腹の探りあいは頭に血が上ったほうが負けだ。駆け引きにおいて、もともと冷静さを失っていた宇野は、あっけなく術中におちた。

「報道したらどうなるか分かるだろ」

「どうって?」

「犠牲者をこれ以上増やしたいのか」

それを聞いて星野はすばやく頭を回転させた。

いくつかのワードを組み合わせて、彼なりに事件の経緯をたどりはじめる。


(犠牲者が増えるって、どういうことだ?)


だが、いかにも情報が少なすぎる。もう少し聞き出したかった。

「増えますかねえ」

そう切り返した星野の目を見て、宇野は気づいた。


(くそう、やられた!)

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