ダーク&ノイズ
その続きを喋ろうとした生徒は、悠美の蒼白な顔を見て口をつぐむ。そこから先は禁句だった。

(あたしだけ……聞いてない)

大きな喪失感と拭えない不安。

その胸中は昨夜からの邪推をさらに大げさなものに変えてゆく。



その日は確かに居場所がなかった。



こうして独りで教室にたたずんでいると、誰しも必ずどこかのグループに属していることが分かる。

休み時間になっても、誰一人として話しかけてくることもなかった。


たった一日でもひどく寂しく苦痛だ。

周りで騒いでる連中がひどく羨ましく思え、そして自分がひどく惨めに思えた。


(あたしってこんなに人気なかったんだ)


その事実がさらに気分を落ち込ませた。

ふと空いている木下裕子の席が目に入った。だからと言って

「木下も毎日こんな辛い思いしてたんだ」

などと殊勝な考えは出てこない。


(ざまあ見ろとか思ってんじゃねえよ)


重い心に毒つくことで、何とか気丈な心を保とうとしていたが、その心底はやはり絶望から這い出そうと必死になっていた。

もやもやしたまま過ごすくらいなら、キッパリと白黒つけたほうが善後策も浮かぶ。


迷っていたが、ついに携帯を取り出すと夏美のメモリーに発信した。


『おかけになった番号は、現在電源を──』
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