ダーク&ノイズ
宇野は、暴徒化した生徒ら全員を取り押さえたという報告を聞いて、ひとつ胸をなでおろしていた。


鎮圧にあたった警官らの話では、刃物をふりまわしていた女生徒らが、とつぜん錯乱状態に陥ったという。

それで、たいした抵抗も受けずに、全員を検挙したのだった。


「全員が……錯乱状態……か」


報告を受けた宇野は、そう言ったまま腕を組んだ。

ここまで来れば、お凛の呪いが単なる伝説ではなくなっていることを示している。それでも、それを県警に報告して応援を呼ぶことが出来るだろうか?


(無理だな)


宇野は、汗で曇るメガネを拭くと、インタビューを続ける星野らのもとへと足を向けた。


その星野は、この一大スクープにさらなる背景が重なっていることに、興奮を隠せなかった。


「お凛の呪いって、誰から聞いたのかな?」


インタビューに答える女生徒らの言葉ひとつひとつが、非常に興味深いものだった。

「6人のいじめグループが最初に呪われたらしいんですけど」
「呪いを解くには、呪った人を殺すしかないんです」
「その冬野って人が、呪いを解くために」
「三人を殺したみたいですよ」

そのどれもが星野にとって宝石にも等しい情報だった。

おもわず舌なめずりして、さらなる金塊を求めてゆく。


「でも、ウチのクラスの生徒……15人くらい?」
「呪われたみたいで、その呪いを解くために」
「あんなことが……」


ようやくシナリオを整理し終えた星野は、車内のパソコンで素早く原稿をまとめていた。

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