ダーク&ノイズ
「どうしたの?」

再びいま来た道を振り返る琢己を、悠美がいぶかしんだ。

「いま、変な女がいたからさ。なんか気になっただけ」

「変な女?」

「ああ、別になんでもないから」

そうこたえた琢己の顔は、確かに含んだものを持っていなかった。


少し安心した悠美は、忘れていたことを急に思い出して話題を変えた。

「そう……あ、そうだ。聞いておきたいことがあったの、忘れてた」

「なに?」

「うん……呪いをかけて人を殺した場合って……罪になるのかな?」

「ならないよ」

琢己の答える口調がそっけなかったのは、呪いという行為じたいに嫌悪感を抱いていることに他ならない。

それは、悠美自身を好きとか嫌いとかいう問題とは、別次元にあった。


「あたしのこと、嫌いになったでしょ」


不機嫌を敏感に感じ取った悠美は、自嘲気味にそう言った。


琢己は返事をしなかった。


< 187 / 250 >

この作品をシェア

pagetop