ダーク&ノイズ
「信じてもらえないかもしれないけど……」

悠美はここにきて心境に大きな変化を起こしていた。それをどうしても、琢己には知ってもらいたくなったのだ。

「あたしは、罪をつぐないたいと思ってる」

逆の立場になって、初めて悠美は人の痛みというものを知った。

「だから、これが終わったら、警察に全部話そうと思う」

「そんなことしても……」

(何のとがめもないぞ)


だが、琢己はそれを言おうとしてやめた。


「悠美、えらいぞ」


かわりにそう言って、子供をあやすように悠美の頭をくしゃくしゃにして撫でた。

「えらくなんか……ちょっと、やめてよ」

「えらいえらい」

「やだ、髪がくずれるじゃん」



緊張を保っていた恭一が、二人に振り向いて首をかしげた。

「バカか、あいつら」




一方、水沢神社は混乱をきわめていた。


警察の権力をもってしても、たった二人ではこれだけの人数を抑えることはできない。

福田の目の前に押しかけた人数は、もはや群衆といっても差し支えない人数となっていた。100人を数えるのではないだろうか。


しかし、その緊張からようやく解放されそうな風向きになってきた。山のふもとからパトカーのサイレンが鳴り響いてきたのだ。


それが耳に入った福田と横井は、安堵の表情を浮かべた。

が、つめかけた多数の人間は、もちろんそれを歓迎するわけではない。


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