ダーク&ノイズ
その焦りのなか、群衆の中心から声が響いてきた。


「横井浩司さーん、逝ってくださーい」


おどけてそう宣言した声に、福田の顔色が変わる。

「やめろ、お前たち何をしてるのか分かってるのか!」

もはや悲痛な叫びに変わっていた。


穴の中で新たに作った藁人形を手に取った男は、その声を聞きながらメガネをゆがめて笑いを作った。



コオーン



釘を打つ音が響いた瞬間、どっと嬌声がわいた。

「よーし、横井おわったー!」

まるでお祭り騒ぎだ。

「おい、あんたら何人やるの?」
「えーと、10人です」
「ほかの警官来ちゃうから早くしてよ」
「ちょっと、順番守ってよ」

口々に飛び出してくる言葉ひとつひとつが、福田の心臓を冷たくする。

(なんで分からんのだ!)

思わず拳銃を引き抜いていた。


いきなり目の前に飛び出した拳銃に、最前列で笑っていた男の顔が一瞬にしてひきつる。

次の瞬間、乾いた発砲音が山あいにこだました。



硝煙の臭いがあたりにただよう。

目の前の男の腰が、崩れて地面におちた。

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