ダーク&ノイズ
拳銃は空に向いていた。

その銃口から煙が消えると、静まり返った群衆に、福田の怒声が降りかかった。


「お前らのためでもあるんだぞ。立ち去れ!」


一瞬たじろいだ群衆だったが、その銃口が自分たちに向けられることはないと悟ると、再び騒ぎを始める。

腰を抜かした男も、恥じた笑いを浮かべながら立ち上がると、またもや鼻息を荒くした。

「あたしたちのためって、何のこと?」
「意味不明なんですけどー」
「あたま大丈夫ですかあ」

異常な事態と言っていい。

法律というタガを外すと、人間の攻撃本能はどこまで暴走するのだろうか。


隣で強引に人垣を崩そうとする横井がいる。

(もし呪いが本物なら……)

ここまで育て上げてきた大切な部下を失うことになる。


胸のなかに、どうしようもない怒りがこみ上げてきた。

(何としても助けてやる!)

福田は、目の前の男の腕を掴むと、強引にひきはがした。




そのとき、ざわついた群衆を、悲痛な叫びが貫いた。



「うわあああ!」





その叫びは、穴の中から発せられていた。

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