ダーク&ノイズ
血相を変えた男が、穴の中から顔を出す。


目を剥き、髪の毛を逆立てた形相は、友人らですら思わず後じさるほどだった。

「助けてくれ!」

その男が筋張った手を伸ばした。


あわてて駆け寄った友人が、その手を握ろうとする。が、それはむなしく空を掴んだ。


「誰かあ!」


頭が、そしてまたたく間に腕が穴の中に引き込まれた。

周りの人間が助ける暇すらない。



「わあああ!」



まさに断末魔の叫びだった。

つい今しがた釘を打っていた男が、その場から消え去ったのだ。




水を打ったように、冷えた空気がその場を支配した。


言いようの無い恐怖に足がすくむ。

その場の誰もが言葉すら発することが出来ない。


四人連れのひとりが、ようやく震える足を踏み出した。


「おい……ふざけてる?」


一歩、そしてまた一歩、男が引きずり込まれた穴へと歩を進めて行く。


腰を屈めた男は、中をうかがうように、そろりと首を差し出した。

「おーい、ふざけてないで──」




福田と横井には、中の様子が見えていない。

つい今しがた起きた叫び声と、この静寂。


それの意味するものを彼なりに推理していたが、そうしている間に、一気に人垣が崩れた。

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