ダーク&ノイズ
「何だ、こいつら」

今までかたくなに神木の周りを囲んでいた群衆が、今度ははじけるように外へとふくらんだ。


福田と横井は身構える間もなく吹っ飛ばされて、地面を転がった。


その横井の頭に鈍い痛みが走る。誰かに蹴飛ばされたようだ。

それでも頭上を飛び越えてゆく足と足の間で、神木に向けた目が何かを捕らえた。


(あれは!)

ほら穴から二足の靴が飛び出している。


それは誰かが上体を穴に突っ込んでいることを意味した。


とっさに横井は、さきほどの叫び声の原因をそこに求めた。

強打してふらつく頭を振ると、地面を蹴る。

「やめろ、横井!」

福田の声が飛んだが、横井の足は、正義感によって突き動かされていた。容易には止まらない。

引きずり込まれる寸前の足首を、横井の手が掴んだ。


「大丈夫か!」


そう言って力を込めた腕が、一瞬にして穴のなかに引きずり込まれる。


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