ダーク&ノイズ
とても人間の力であらがうことなど出来そうにない。


それほど圧倒的な力だった。

「なんなんだ!」

思わずそう毒ついたとき、穴の中に突っ込んだ腕が、違和感を感じた。


「横井!」


ようやく起き上がった福田が、横井の胴に手を回した。

「だめです、福田さん。離れてください!」

横井の手を伝わる感触が、これが尋常なものではないことを感じ取っていた。


(なん……だ)


どっと冷や汗が全身からふき出してくる。

今までつかんでいたものは、確かに足首だったはずだ──


「うおおお!」


渾身の力を振り絞って、それを引き剥がそうとするが、逆にそれらは容赦なく腕に絡みついてきた。

「福田さん、早く逃げてください!」

「馬鹿いうな!」

「お願いです。早く逃げて!」


ついに二の腕までそれは絡みつき、横井の体を一気に引きずり込んだ。

「横井いっ!」

上半身が穴に飲み込まれたが、福田はそれでも手を離さない。

「絶対助けてやる!」


そう言ったものの、とても助け出せそうにはない。

(川田さんと進藤も、もしや──)

そのとき、境内の入り口に騒ぎが起きた。その声は逃げていった連中をとがめるものだ。


ついに応援がきたことを知った福田は、あらん限りの声をあげた。

「こっちだ、早く来い!」

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