ダーク&ノイズ
そう言ってる間に、ついに腰までも姿を消した。まるでブルドーザーに引っ張られているような圧力を感じる。

「早く来い、何してる!」

一秒でも待っていられない。

(いかん……)

足を掴む手の感覚がなくなってきた。


このままでは、福田も同じく穴に引きずり込まれてしまうのは必至だ。

ついに左手を穴のへりにかけて体を支えた。


その瞬間、ざわりとした感触が手にまとわりついた。


(──っ!)


危険を感じた福田は思わず左手を引く。と、同時に一瞬ゆるんだ右手から横井の足が離れた。

「横井!」

とっさに手を伸ばしたが、



もうそこにはただの闇しかなかった。



声を聞き、あわてて境内に足を踏み込んだ警官隊が目にしたものは、転がった石の上に、呆然と腰をおとしている福田の姿だった。

「福田さん、何かあったんですか」

駆け寄った警官隊が声をかけたが、返事の代わりに返ってきたものは、恐怖と哀痛をないまぜにした蒼白な顔だった。

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