ダーク&ノイズ
一方、少女らを連行するパトカーの車内。

宇野の目の前の警察無線から聞こえてくるのは、ひどく不機嫌な署長の小言だった。


宇野は署長から絶大な信頼をうけていた。したがって、宇野の対処が間違っていたとは考えてはいないのだろう。

それでもこぼれてくるのは、不満の声でしかない。


それはマスコミの報道のなかで、警察が呪いを認知していたかのような放送を行っていたからだ。

その真偽を突きつけられて、宇野は口ごもった。

「とにかく、すぐに署に戻りますから、そこで詳しい説明をします」

険しい表情で無線を切った宇野は、ちらりと後ろをかえりみた。


後部座席には、警官の横で二人の少女がうつむいて座っている。

その姿は、つい今しがた、刃物をふりまわして同級生を襲っていたとはとても思えなかった。


なんともやりきれない思いが、長い息とともに吐き出される。

(なんて事件だ……)

そう心の中で呟いたとき、宇野の耳が異常をとらえた。


「おまわりさん……来た……」


まさか、という思いで振り返った宇野の目に、視点の定まらない目を見開いた二人の少女の姿があった。

冷気がぞっと背筋を走ってゆく。

(まさか、こんな時に)

このパトカーには、自分を含めて三人の警官が乗っている。


それでも呪いが起こるとすれば──
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