ダーク&ノイズ
(まだまだ序の口だったのか)


次に悲壮な声をあげた少女らは、隣の警官にすがりついて泣き叫んだ。

「助けて、お願い!」

後部座席の警官は、その様相に驚いて身を固くした。何が起こっているのか、まったく分からないのだ。無理はない。

「おい、大丈夫だ。ここなら安全だから安心しろ!」

宇野は、少女らの叫ぶ声に対抗するような大声を出して手を伸ばした。

だが、その手はすでに少女らには見えないものになっていた。

(まさか)

宇野はマイクを掴むと、全車両に連絡をした。

「こちら宇野。ホシらの様子に変わったところはないか」

間髪入れず次々と返ってくる連絡は、そのどれもが困惑を隠さない。中にはパニックに近い状況を伝えてくるものさえあった。

「まず安心させろ。これだけ警官がいるんだ」

そうは言ったものの、宇野のマイクにも少女らの血を吐くような叫びが割って入ってくる。

「刑事長(宇野)!」

その叫びは少女のものではない。後部座席に同席している警官だ。

「刑事長ーっ!」

うろたえる部下に、宇野は舌打ちした。

「大丈夫だ、安心──」

マイクを握ったまま振り向くと、いるはずの少女がいない。


とっさに目を移した宇野が見たものは、後部座席の上にポンと乗った少女の頭だった。



心臓が止まるほどの恐怖が宇野を襲う。



(ウソだろ……)


その顔がずるりと動いた。

いや、正確には下に引きずりこまれているのだった。


「なんすか、これ何すか!」

横に座っている警官は、助けることすら忘れ、その状況にパニックを起こしていた。

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