ダーク&ノイズ
同じ死ぬとしても、こんなことで死にたくはない。それこそ自分の魂がどこに連れて行かれるのか、想像すらしたくない。

(誰が……)

警察官の宇野でさえ、たとえ殺人を犯してでもこの状況から逃れたいと思った。




星野は、警察署の駐車場に止めた中継車の中にいた。

警察署での取材を行うため、局と連絡を取っているところだ。報道を規制されたことに憤りをぶつけていた。

「こんな特ダネをいつまでしまっとくんですか!」

自分が最初に押さえた大スクープだ。女子高での騒ぎの映像も、何度でも使えるはずだった。

「放送協会もなんで黙って──」

なおも唾を飛ばそうとした次の瞬間、その唾を飲み込むことになった。


(えっ……)


暗い。


視界に映るすべてのものが、見る見るくすんだ灰色になり、ついにとっぷりと闇に覆われた。

「おい、なんだこりゃ!」

携帯電話のスピーカーからは、星野の異変をいぶかしむ声が流れ続けている。



コオーン……


(闇のなかで、音が聞こえる)

インタビューに答えた女生徒らは、口を揃えてそういったはずだ。



呪いがかかったらどうなるかを。



星野はまさにその状況に直面したことになる。

『もしもし、どうした。星野!』

携帯電話が床に落ち、硬質な音が響く。

『おい、星野!』

その音すら通話先に聞こえないほどの絶叫が車内に満ちていた。



闇のなかで、目の前のパソコンだけがぼんやりと光をたたえている。

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