ダーク&ノイズ
「お前の意見を聞きたい」

そう尋ねていた。


それを受けて、宇野が腕を組む。

しばらく黙考したあと、山道を登る足を止めた。


「引き返したほうがいい」


それが当面、最善の行動だと考えた。


「じゃあ、その藁人形をどうする」

「こうなっては意味がないだろう。特定の人間が呪いを受けたわけじゃない」

「警察の人間だけに起こったということは」

「ありえない。恐らく街中が同じ状況だ。急務は街の治安を回復することだろう」

「街中……ということは」

「これから何が起こるかわからんが、機動隊だけじゃない、県警、警視庁にも人員を要請しなくちゃならんかもな」


確かに宇野の言うとおりだった。


「俺たちは警察だ。霊能者じゃない。自分たちに出来ることを最優先させるべきだろう」


それを聞いて内田は苦笑した。


(なるほど、餅は餅屋だな)


藁人形から手がかりを探すという捜査に何の意味もなくなったのだ。

あわよくば呪いを解けるのではないかと思っていた内田だったが、それは思い上がりだと気づかされた。


「よし、上の警備にあたっている人員はそのまま残そう。俺たちは街の情報を集める」


20人ほどの捜査員は、その向きをかえた。が、その足はすぐに止まった。


「誰だ!」


捜査員のひとりが声をあげた。

暗闇のなか、何者かがいる。
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