ダーク&ノイズ
「それは神木の怒りだ。聖域に踏み込んだ者は、とどまれば死ぬ。だから呪いをかけた者の多くは、その場で死んでいるはずだ」


琢己は初めて聞く事実に足をすくませた。


「そんなの聞いてないですよ。大丈夫なんですか」

「琢己、佐々木さんを信じろ」

「でもよ、俺たちだけなら良いよ。悠美までそんなとこに」


気色ばんだ二人を佐々木が制した。

そして、悠美に目を据える。


「悠美さん、君はどう思う。この街を救うためには君の力が必要だ」


この騒ぎの発端を考えると、その原因は間違いなく悠美にある。罪をつぐないたいと言うのならば、自分の命と引き換えにすることも覚悟しないといけない。

友人らはほとんど死んだ。

自分だけがここで逃げ出すのは、それこそ口先だけの言葉になるだろう。

ようやく悠美の目つきが変わった。


「あたし、行きます」


琢己を置いて、悠美は神社への道を曲がってゆく。

恭一は少し驚いたようにそれを見送って言った。


「ちょっと見直したよ」


琢己はそれを聞いて嬉しくはあったが、不安は増すばかりだ。それには答えず、厳しい表情で悠美の前に出た。

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