ダーク&ノイズ
行く手にはもうひとつ関門が残っていた。

境内の入り口にも数人の警官が配備されていたのだ。


「どうします、もう一回やりますか」


恭一は、また佐々木の技が見れることに興奮を覚えていた。


「あまり使うのは良くない」


しかし佐々木は、技の危険性も熟知している。人の命を易々と危険にさらすのは、できれば避けたいのだ。

「じゃあ、僕に任せてください」


恭一は三人を道の脇の木立に誘い、そして声を張り上げた。


「おーい、緊急事態だ。助けてくれ!」


すぐさま警官が駆け降りてくる。三人の警官は四人の前を通り過ぎると、しばらくして下の道から大声を上げた。

「おーい、大変だ!」

内田らが倒れているのを見つけると、境内に残っていた警官らも一斉に駆け下っていった。


「頭脳プレイってやつです」

救急車を呼んだりの手配で、しばらくは上がってこないだろう。恭一は得意げな顔で境内への道を急いだ。



境内への入り口で、佐々木の足が止まる。そして三人を制すように両手を広げた。

しかし制すまでもない。そこから発せられる異様な雰囲気は、誰の足でも止めるだろう。それほど圧倒的な霊気をただよわせる空間だった。

(ここで警備していた警官は、心身ともに消耗したことだろう)

佐々木は、警官らの身を案じながら両膝を地につき、両手を地面に伏せた。


「身中諸内境・参萬六千神・動作履行蔵・前劫並後業・願我身自在・常住三寶中……」


神妙に祝詞を上げ始めると、他の三人もならって膝を折る。

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