ダーク&ノイズ
が、これで除霊がすんだと思っていた三人は、まだ先があることを聞かされて、肩を落とした。

「まだ神木に近づくことを許してもらったにすぎない。これより除霊を行う」

その言葉にもっとも緊張を走らせたのは悠美だ。


何百年にも渡り、この世をさまよってきた憎悪がとぐろを巻いている。神木の前に来ただけで、悠美の全身の毛穴がざわりと開いた。

「君たちにも協力してもらう。それぞれ私の言う場所で祈りを捧げてくれ」

そう答えた佐々木は、長さが30センチほどもある長く太い針を渡した。

三人は祈りのやり方などてんで分からない。が、佐々木が言うには、一心に霊の成仏を祈ってれば良いということだった。


「目をつむっていたほうが良い。これから何が起こっても声をあげてはならない。そして、私の指した場所をわずかでも動かないようにしてくれ。もし、それを破れば命の保証はできないし、この除霊も失敗に終わる」


それを聞いて、さらに身を固くした三人は、言われるがままにその場所についた。それは東西南北の神の力を借りて悪霊を祓う、四方の礼と呼ばれるものだ。


佐々木が掲げた呪針を地面に突き刺すと、三人も見よう見まねでそれぞれ呪針を刺す。

深く拝した佐々木は、そのまま祝詞をことほいだ。


「霊寶天尊・安慰身形・弟子魂魄・五臓玄冥・青龍白虎・隊仗紛紜・朱雀玄武・侍衛身形……」




救急車に運び込まれるところで、宇野の意識が戻った。

ふと周囲に目をやると、署員らがまだ担架に乗ったまま並んでいる。


(なんでこんなことに……)


宇野は途切れた記憶をたぐりよせる。

そこにふっと、ひとりの少女の顔が浮かんだ。


「谷川悠美だ!」

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